ユーラシアの近代と新しい世界史叙述

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【報告】2014年1月26日:「総括と今後の方向について」

2014年03月19日

2013 sokatsu haneda1.JPG「総括と今後の方向について」と題された本科研最後の研究会では、科研の責任者である羽田氏の司会のもと、まずこれまで行われた研究会など各種イベント、成果としての出版物の総括を行い、合わせて現在出版計画が進行中であるモノグラフシリーズと論文集の進捗状況が確認された。そのうえで羽田氏は、当初の目的であったひとつの「決定版」の提示ではなく、「複数の世界史」の存在を想定したうえで、その議論のための「プラットフォーム」を用意し、二項対立的見方の放棄や比較と連環の視点など、新たな基本的考え方を共有したことに本科研の意味があったと総括した。

 続けて、現在申請中の2つのプロジェクト・研究拠点形成事業「新しい世界史/グローバルヒストリー共同研究拠点の構築」と新学術領域研究「グローバル人文学の創生」の紹介が行われた。前者は、新しい世界史解釈の基盤となる見方を生み出すための国際的ネットワーク型研究拠点の構築を目指すもので、具体的な計画として、国内ネットワークの整備と東大、プリンストン大学(アメリカ)、フンボルト大学(+ベルリン自由大学)(ドイツ)、社会科学高等研究院(フランス)を結ぶ国際ネットワークの確立、またそれらを基盤とする研究領域の確立・強化、若手育成などのプランが紹介された。一方後者は、人文学の各分野で「地球」を枠組みとする新たな視点に基づく研究成果を発表し、それに基づく学術領域「グローバル人文学」を創生することを目的とする。ここでは、国際共同研究を通じた研究手法の確立、研究成果の(とりわけ英語での)発表をつうじた世界での指導的立場の確保という目標が提示され、合わせて仮の状態ながら、歴史学、哲学、文学などの人文学の各分野をカバーし、科学技術、サステイナビリティ、情報など今後よりいっそう重要度を増すであろう諸トピックを包含した研究組織案と研究戦略も提示された。

 討論ではとりわけ、「グローバル人文学」の「グローバル」と「人文学」という二つの語に関する議論が集中的に行われたように感じる。前者については、研究・教育の場において「グローバルたること」の意味や、羽田氏が著書において使用した「地球市民」という用語及びその含意、またそれが如実に現れる訳語(Global citizenか、Transnational citizenか)といった話題が取り上げられた。また後者については「人文学」の範囲や取り扱う対象、方法論、意義などがとりわけ社会学との関連において議論された。ここでは、現在計画されている「グローバル人文学の創生」が「人文学」という既存の学問領域そのものを再定義するような「知」の検討作業となるであろうことが確認されたと思う。また合わせて、近年盛んに叫ばれる大学の「国際化」の趨勢について、現状をどう見るか、またいかに改善すべきかといった問題も話し合われた。

2013 sokatsu haneda2.JPG 羽田氏が最後に改めて指摘したとおり、具体的な成果もさることながら様々な研究会・イベントを通じて「プラットフォーム」が形成され、これまで相互にかかわりのなかった研究者たちが活発に交流できたというのが本科研のひとつの大きな成果であろうと思われる。かくいう報告者自身も、研究会における第一線の研究者たちの活発な議論から刺激を受け、自分の研究の方向性について大きく影響を受けた。おそらくこうした感慨は、本科研にかかわった参加者の全員が共有しているものと思う。上記2つのプロジェクトが実現するか否か、本報告執筆中の現時点では未定であるが、それにかかわらず本科研の成果が今後様々な形で、新たな世界史叙述を生み出していくためのスタート地点になると信じている。

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